我が家のキッチンは、築十五年を過ぎたあたりから少しずつ機嫌が悪くなってきました。特に困ったのが、排水の流れの悪さです。洗い物をしていると、いつの間にかシンクに水が溜まってしまい、最後には「ゴボッ」という不気味な音を立ててゆっくりと消えていく。そんな毎日が続いていました。ある日、ネットで見た情報を参考に、排水口のワントラップを外してみました。すると、驚くほどスムーズに水が流れていくではありませんか。それまでの苦労が嘘のように、渦を巻いて吸い込まれていく水を見て、私は「犯人はこのトラップだ」と思い込みました。しかし、トラップを洗って元に戻すと、やはり流れは元通り。トラップを外すと流れるのに、つけると流れない。この矛盾に悩み、私は本格的な調査を開始しました。分かったのは、問題はトラップにあるのではなく、その先にある排水ホースや配管の奥に潜んでいるということでした。配管の中に空気が溜まっていて、それが水の進行を邪魔している状態、つまり「エアロック」が起きていたのです。トラップを外すと空気が抜けるので流れる。この理論を理解した私は、自力で徹底的な洗浄を行う決意を固めました。まず、シンク下の収納から排水ホースを取り出してみることにしました。驚いたことに、蛇腹状のホースを外すと、その内部にはクリーム色の脂の塊がびっしりと詰まっていました。まるで動脈硬化を起こした血管のようです。私はホースを新しいものに交換し、さらにその先の塩ビ管の中へ、ワイヤー式のパイプクリーナーを慎重に送り込みました。二メートルほど進んだところで、確かな手応えがありました。何度もワイヤーを回転させながら抜き差しすると、カチカチに固まった油の破片がボロボロと出てきました。仕上げに、酸素系漂白剤と熱めのお湯を使って、残った汚れをじっくりと溶かしました。数時間の作業を終え、トラップを元の位置にセットして蛇口を最大に開きました。結果は完璧でした。トラップをつけた状態でも、以前とは比べ物にならないスピードで水が流れていきます。この経験から、私は「便利さの裏側」を学びました。毎日使っているキッチンも、見えない部分では着実に汚れが溜まっている。それを放置して、表面的な対処(トラップを外して流すなど)だけで済ませていては、いつか手遅れになるということです。今では、月に一度は排水溝の奥まで点検し、油汚れを溜めないように工夫しています。自分の手で家をメンテナンスする喜びと、水の流れる心地よい音。それは、ただの掃除以上の充実感を私に与えてくれました。
台所の水はけ問題を自力で直した記録